起こしてくれた白い手
1994.05.某日
とあるスタジオで私は、住み込みで働いていました。
住み込みなので、基本24時間勤務になります。
睡眠は、スタジオ内の1室で雑魚寝でした。
休日はもらえますが、自室というものが存在しないので、部屋で寝ているということができません。
慣れない勤務形態で、クタクタになる毎日でした。
失敗が続き、よく怒られていましたが、それでも休日はいただけました。
ある休日のこと、山手線に乗っていると降りるべき駅の少し手間でウトウトしてしまい、危うく寝過ごすところでしたが、誰かの白い手が私を起こしてくれました。
寝過ごしかねない状況とはいえ、電車内でウトウトしているだけなので、"誰かの手" が起こしてくれた くらいのことは分かります。
その白い手は服の袖も白でした。(まあ服そのものが白い服だったのでしょう)
しかし、少し光っているようにも感じました。
それ以外でも、早起きをしないといけない時に起こしてくれたり、スタジオ内の掃除をしている時に一人こもってシャワー室の掃除をしていると、つい眠り込んでしまいましたが、その時にも起こしてもらえて、私の様子を見に来た先輩に叱られることもなく、やり過ごすことができました。
一つ一つは地味ですが、要所要所で白い手は私を起こしてくれて助けてくれました。
【後日】
そのスタジオは、私には続けられず転職をいたしました。
白い手を見ることも無くなりました。